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俺のイナリーズは京都伏見稲荷大社にあるのではなく、ノースハワイにある。
このブレイクは、西北西うねりをメインに北西、西、南西にも反応する。
ということは、日本の上、アリューシャン列島、そうだなカムチャッカ半島(Камчатка)までの海域で発達した低気圧からのうねりが届く。
簡単にいえば「西高東低」の気圧配置で、日本にいるみなさんが「寒い...」となればその日から5〜7日でイナリーズにうねりはやってくる。
昨日からイナリーズにうねりが入っている。
とするとこれは先週、日本が寒かったことを意味する。
大学の講義みたいになってきたな。
とにかくこの広々とした砂浜にやってくるうねりはある意味で異様だ。
なぜならば、イナリーズにやってきたうねりは例外なく、見たこともないほど切り立ち、ねじれ、回り飛び、波先を海面に炸裂させるのだ。
その波は殺気があり、「寄らば斬る」といった幕末の新撰組夜廻りのようにズッタズッタとサーファーを斬り殺していく。
俺も去年幾度となく斬られ、「今年こそは、今日こそは」と燃えているのだが、まだそれを果たせず、朝は暗い内から詣でるように行き、祈るように沖に出て、海から上がると砂浜のゴミを掃除したりして、イナリーズ様の機嫌取りをしている次第だ。
でもこんなガラの悪いイナリーズも時折、「サービスボーナスおまけだよん」といった類の波が紛れていて、それにありつくと、すばらしいバレル体験をすることとなる。
そんな気持ちは「良かった良かったでも怖かった」
とまだ安心しきってはいないが、とその晩はビールをブシュっと開け、おいしく飲めることもあるから俺はイナリーズの魔神導力にすっかりはまってしまっている。
夏のホワイトハウスを「魔性の女みたいな波だ。上手く乗れると最高だけど、失敗するとひどい目に遭う」とみんなは表現しているが、
このイナリーズは狐であるゆえに俺を化かしているのかもしれない。
実際はしょぼい波だったりして...。(笑)
イナリーズ命名の由来はいつだったかのブログに書いたので、あとで探してきてリンクさせます。
今朝のイナリーズでのベストウエーブを撮りました。
血湧き肉躍る瞬間。
巻かれるのを覚悟して波の下に潜らずに、大明神内部探索。
Oh My Inari!
これを見てしまうと、もう血液が沸騰するかのごとく、アドレナリンやモルヒネやらが脳から分泌され、いわゆる「気持ちのいい」状態になる。
実はまだ撮っていて、タイトルは
「決死!極秘!稲荷S内部で何がおきたのか!?」
と!が多く表記されるCX系のドキュメントスタイルとなる。
または
「プロジェクトX 夢を形にしたイナリーズ」
女性司会が
「それにしてもすごい映像ですが、なぜ水滴がどこにも付いていないのですか?またこの波の中でカメラを持っていて怖くはないのですか?」
と俺に振り、
「いやあ、夢中でなにがなんだか..」
とケンソンする。
男の司会が
「大変なご決断でしたね」
とお決まりのセリフを言うと、俺は大げさに涙ぐみ、こんなことを書いているのは変だと気づいた。
これが最後のショットです。
波もこうなると、神々しく宇宙的だと俺は思う。
さあ、ビールの時間だ。
今日はうまいビールが飲めることだろう。
このブレイクは、西北西うねりをメインに北西、西、南西にも反応する。
ということは、日本の上、アリューシャン列島、そうだなカムチャッカ半島(Камчатка)までの海域で発達した低気圧からのうねりが届く。
簡単にいえば「西高東低」の気圧配置で、日本にいるみなさんが「寒い...」となればその日から5〜7日でイナリーズにうねりはやってくる。
昨日からイナリーズにうねりが入っている。
とするとこれは先週、日本が寒かったことを意味する。
大学の講義みたいになってきたな。
とにかくこの広々とした砂浜にやってくるうねりはある意味で異様だ。
なぜならば、イナリーズにやってきたうねりは例外なく、見たこともないほど切り立ち、ねじれ、回り飛び、波先を海面に炸裂させるのだ。
その波は殺気があり、「寄らば斬る」といった幕末の新撰組夜廻りのようにズッタズッタとサーファーを斬り殺していく。
俺も去年幾度となく斬られ、「今年こそは、今日こそは」と燃えているのだが、まだそれを果たせず、朝は暗い内から詣でるように行き、祈るように沖に出て、海から上がると砂浜のゴミを掃除したりして、イナリーズ様の機嫌取りをしている次第だ。
でもこんなガラの悪いイナリーズも時折、「サービスボーナスおまけだよん」といった類の波が紛れていて、それにありつくと、すばらしいバレル体験をすることとなる。
そんな気持ちは「良かった良かったでも怖かった」
とまだ安心しきってはいないが、とその晩はビールをブシュっと開け、おいしく飲めることもあるから俺はイナリーズの魔神導力にすっかりはまってしまっている。
夏のホワイトハウスを「魔性の女みたいな波だ。上手く乗れると最高だけど、失敗するとひどい目に遭う」とみんなは表現しているが、
このイナリーズは狐であるゆえに俺を化かしているのかもしれない。
実際はしょぼい波だったりして...。(笑)
イナリーズ命名の由来はいつだったかのブログに書いたので、あとで探してきてリンクさせます。
今朝のイナリーズでのベストウエーブを撮りました。
血湧き肉躍る瞬間。
巻かれるのを覚悟して波の下に潜らずに、大明神内部探索。
Oh My Inari!
これを見てしまうと、もう血液が沸騰するかのごとく、アドレナリンやモルヒネやらが脳から分泌され、いわゆる「気持ちのいい」状態になる。
実はまだ撮っていて、タイトルは
「決死!極秘!稲荷S内部で何がおきたのか!?」
と!が多く表記されるCX系のドキュメントスタイルとなる。
または
「プロジェクトX 夢を形にしたイナリーズ」
女性司会が
「それにしてもすごい映像ですが、なぜ水滴がどこにも付いていないのですか?またこの波の中でカメラを持っていて怖くはないのですか?」
と俺に振り、
「いやあ、夢中でなにがなんだか..」
とケンソンする。
男の司会が
「大変なご決断でしたね」
とお決まりのセリフを言うと、俺は大げさに涙ぐみ、こんなことを書いているのは変だと気づいた。
これが最後のショットです。
波もこうなると、神々しく宇宙的だと俺は思う。
さあ、ビールの時間だ。
今日はうまいビールが飲めることだろう。
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昨日AVISO社からモニター用のボードが3本届いた。
そして俺用の50/50ウエイブスケートも入っている。
宣伝するわけではないが、弊社の重厚梱包(笑)をほどくと、その中の一本に一目惚れした。
このボードはサイズが6.2と少し細身で、ものすごい速さで走りそう。
前にシエィ(・ロペス)と話したときにこのモデルの話になって、「6フィートのハレイワ、ログキャビンで乗り、調子が良くて驚いたよ」と言っていたことを思いだした。
その時はAVISOというものは少ししか知らなかったので、ジェフ・ジョンストン、6.2、ラウンドピンというキーワードを記憶していた。
その新品が俺用に届いたことに高いフォースの合致を感じてしまった。(笑)
さて、AVISOはみなさんもご存じのようにモールドツールからの高精度複製なので、寸分違わぬボード製造が可能な未来ボード。
だからシエィの乗ったマジックボードが新品でここにあるのです。
簡単に言うと、AVISOは超品質クローンだから、自分のマジックボードが出現すれば、もし無くしたり、落としたりしたとしても、モデル生産を継続している限り全く同一なものが手に入るのです。
未来派だなあ。
さてさて、
今日のイナリーズは北西からうねりが入ってきて、4フィートオーバーのコンディション。
これは、この波を拡大したもので、バレルに入るとこんなキラキラが見える。
今まで幻想だと思っていたけど、ちゃんと映っていた。
そういえば今日は朝だけ快晴で、その後曇天だった。
「早起きは三文の徳」だね↓
先日の巨大南うねりで岸に砂が上がってしまい、バックウオッシュが入るようになってしまった。
クローズアウトも多く、普通のボードならかなりの確率で折ってしまうだろう。
普通のボードにくらべて7倍の強度を誇るAVISOのお披露目&テストには完璧。
コードネーム『AVISO-6.2-JJ』の初乗りだあ。
安定したテイクオフ。
こんな傾斜の斜面でもこの通り。
高速になっても変な浮き上がりはせず、またレイルもどこも引っかからずにバレルセット。
このまま走るだけ走って、あと2mで出口、というところで一気にバレルは10m伸び、ギロチンスラム。
しかし、ボードはもちろん無傷、俺は笑顔。
アヴィソ来て 高速滑降 イナリーズ
次の波が来る前に
という歓句を詠んでしまった。
詳しい人はおわかりですが、この季語はイナリーズ(冬)ですね。
ハニコムヴェクターをフロントに付け、F3ハニコムをバックフィン。
高精度ボードには高品質フィンをね。
『AVISO-6.2-JJ』は満点合格です。
ということで近日中にNAKISURF内で取り扱います。
適正体重が
72-78+ プロ
68-75+ 上級者
62-72+ 中級者
40-68+ 初心者
ちなみに私の体重は62kgです。
「ジェフ・ジョンストンって知ってる?」
ってマット(メイヘム)に電話したら
「ものすごくいいシェイパーだぞ。お前知らなかったのか?」と驚かれた。
学校で習っておけばよかった....。
人名辞典はどこですか?
ある夜、波乗りが大好きな男の子が留守番をしていました。
外は雪の寒い夜でしたが、部屋の中は暖炉(だんろ)の火が赤々と燃え、とてもあたたかでした。
男の子はエディー・アイカウが波に乗る絵を描いていました。
すると、どこも閉まっているはずなのに、ピューッと冷たい風が入ってきて、部屋いっばいに霧が広がりました。
男の子は少し怖くなって、暖炉の火のそばへ行きましたが、ふと、うしろをふりかえってビックリ。
霧の中には、サーフワックスを持った男の人が見えたのです。
隣には、赤ちゃんを抱いている女の人もいます。
赤ちゃんは、大きな声で泣いています。
きっと男の人はお父さんで、女の人はお母さんなのでしょう。
女の人は、赤ちゃんをあやしながら言いました。
「おお、よしよし。今お父さんが、コンテストで賞金をかせいでくるからね。そうしたらお医者さまにかかれるからもう少しの辛抱だよ」
お父さんは、ワックスを暖炉の火で温めました。
火の中に手を入れても平気な様子からして、多分、男の人も女の人も、それに赤ちゃんも不思議世界の人たちなのでしょう。
ワックスが温まると、お父さんはそれをボードに塗りたくり、海に出て行きました。
すると、そこはパイプラインで、お父さんはデビッド・ヌヒワよりもジェリー・ロペスよりも大きくて深い波に乗って、バレルをどんどんメイクして、賞金の小切手を大きく掲げ、お医者さんを連れて帰ってきました。
お医者さんは名医らしく、赤ちゃんの体に手を当てると、泣いていた赤ちゃんの泣き声がピタリとやみ、今度はうれしそうに笑い出したのです。
「ああ、よかったね。お病気が治ったね」
不思議世界のお父さんとお母さんは、ニッコリとほほえみました。
そのとたん、その人たちは消え、霧も晴れ、何もなかったように元の部屋に戻ったのです。
男の子は目をパチクリさせて、頭を振りました。
「もしかしたら、今のは夢だったのかな?あっ、これは!」
男の子の目の前に、さっき不思議世界でお父さんが使っていたワックスが置いてありました。
男の子は、そのワックスを引き出しの奥に隠しておきました。
やがて、男の子は若者となり、サーフィンコンテストに出るようになりました。
あるとき、大事な試合で、若者は隠しておいた不思議世界のワックスを使ってみました。
すると、たちまち倍速スピード、どんな技をかけても転びません。気が付くと優勝していました。
友だちはおどろき、そのワックスのことをサーフィンクラブの人たちに話しました。
それからというもの、みんなは重要な試合や大きい波の時には若者のところへ来るようになりました。
となると、コンテストで勝つことはもう不可能です。
若者は結婚して、暮らしが貧しく大変になっても、
「これは、 不思議世界の人からもらったものだから」
と、村の人たちからお金を取ることはしなかったのです。
そうして、いつでも具合の悪い人がいればこのワックスを塗ってあげました。
ありがたいことに、このワックスは毎日たくさん使っているのに、ちっとも減りませんでした。
若者と奥さんは、村の人たちからとても感謝され、大事にされていました。
けれどもある日、ワックスは盗まれてしまいました。
その効能のすばらしさに目を丸くした泥棒は、これで一儲けしようと企んだのです。
「このワックスを使えば、すぐに金持ちになるだろうな」
不思議ワックスを塗って波に乗ることをおぼえたサーファーたちは、もうこれなしでは波に乗れません。
ワックスを使うためには泥棒の言う通りにするしかないので、たくさんのお金を払いました。
そのお金のためには恐喝、窃盗、強盗となんでもやったので、そんなサーファーたちはやがて警察に捕まり、牢屋に入れられてしまいました。
泥棒はお金持ちになりました。
けれども泥棒が使うようになってからは、ワックスが減るようになったのです。
泥棒が、残り少なくなってきたワックスを自分に塗ろうとしたら、手からころころと崖の下に落ちていってしまいました。
泥棒は崖を命からがら降りて行き、落ちた辺りを這いつくばって探したのですが見つかりません。
やがて夕方となり、暗くなってきたので泥棒は懐中電灯を取ってこようと家に戻る途中で酔っぱらい運転のダンプに追突され、死んでしまいました。
それから何十年も経って、若者がおじさんになって、海の上に浮いているワックスを見つけ、ノーズにさっと塗ってみると、昔の魔法が戻ってきました。
おじさんになった若者は、ものすごいサーフィンをして、廻りの人を驚かせました。
そのワックスは小さかったけど、いくら使っても減りません。
おじさんに子供が生まれ、その子の名前をケリーと付けました。
ケリーは、世界チャンピオンを7回取った腕前ですが、お父さんの教訓からこのワックスを使っていることは、心許せる友人だけが知っています。
All photos by ©Kenboku2006
外は雪の寒い夜でしたが、部屋の中は暖炉(だんろ)の火が赤々と燃え、とてもあたたかでした。
男の子はエディー・アイカウが波に乗る絵を描いていました。
すると、どこも閉まっているはずなのに、ピューッと冷たい風が入ってきて、部屋いっばいに霧が広がりました。
男の子は少し怖くなって、暖炉の火のそばへ行きましたが、ふと、うしろをふりかえってビックリ。
霧の中には、サーフワックスを持った男の人が見えたのです。
隣には、赤ちゃんを抱いている女の人もいます。
赤ちゃんは、大きな声で泣いています。
きっと男の人はお父さんで、女の人はお母さんなのでしょう。
女の人は、赤ちゃんをあやしながら言いました。
「おお、よしよし。今お父さんが、コンテストで賞金をかせいでくるからね。そうしたらお医者さまにかかれるからもう少しの辛抱だよ」
お父さんは、ワックスを暖炉の火で温めました。
火の中に手を入れても平気な様子からして、多分、男の人も女の人も、それに赤ちゃんも不思議世界の人たちなのでしょう。
ワックスが温まると、お父さんはそれをボードに塗りたくり、海に出て行きました。
すると、そこはパイプラインで、お父さんはデビッド・ヌヒワよりもジェリー・ロペスよりも大きくて深い波に乗って、バレルをどんどんメイクして、賞金の小切手を大きく掲げ、お医者さんを連れて帰ってきました。
お医者さんは名医らしく、赤ちゃんの体に手を当てると、泣いていた赤ちゃんの泣き声がピタリとやみ、今度はうれしそうに笑い出したのです。
「ああ、よかったね。お病気が治ったね」
不思議世界のお父さんとお母さんは、ニッコリとほほえみました。
そのとたん、その人たちは消え、霧も晴れ、何もなかったように元の部屋に戻ったのです。
男の子は目をパチクリさせて、頭を振りました。
「もしかしたら、今のは夢だったのかな?あっ、これは!」
男の子の目の前に、さっき不思議世界でお父さんが使っていたワックスが置いてありました。
男の子は、そのワックスを引き出しの奥に隠しておきました。
やがて、男の子は若者となり、サーフィンコンテストに出るようになりました。
あるとき、大事な試合で、若者は隠しておいた不思議世界のワックスを使ってみました。
すると、たちまち倍速スピード、どんな技をかけても転びません。気が付くと優勝していました。
友だちはおどろき、そのワックスのことをサーフィンクラブの人たちに話しました。
それからというもの、みんなは重要な試合や大きい波の時には若者のところへ来るようになりました。
となると、コンテストで勝つことはもう不可能です。
若者は結婚して、暮らしが貧しく大変になっても、
「これは、 不思議世界の人からもらったものだから」
と、村の人たちからお金を取ることはしなかったのです。
そうして、いつでも具合の悪い人がいればこのワックスを塗ってあげました。
ありがたいことに、このワックスは毎日たくさん使っているのに、ちっとも減りませんでした。
若者と奥さんは、村の人たちからとても感謝され、大事にされていました。
けれどもある日、ワックスは盗まれてしまいました。
その効能のすばらしさに目を丸くした泥棒は、これで一儲けしようと企んだのです。
「このワックスを使えば、すぐに金持ちになるだろうな」
不思議ワックスを塗って波に乗ることをおぼえたサーファーたちは、もうこれなしでは波に乗れません。
ワックスを使うためには泥棒の言う通りにするしかないので、たくさんのお金を払いました。
そのお金のためには恐喝、窃盗、強盗となんでもやったので、そんなサーファーたちはやがて警察に捕まり、牢屋に入れられてしまいました。
泥棒はお金持ちになりました。
けれども泥棒が使うようになってからは、ワックスが減るようになったのです。
泥棒が、残り少なくなってきたワックスを自分に塗ろうとしたら、手からころころと崖の下に落ちていってしまいました。
泥棒は崖を命からがら降りて行き、落ちた辺りを這いつくばって探したのですが見つかりません。
やがて夕方となり、暗くなってきたので泥棒は懐中電灯を取ってこようと家に戻る途中で酔っぱらい運転のダンプに追突され、死んでしまいました。
それから何十年も経って、若者がおじさんになって、海の上に浮いているワックスを見つけ、ノーズにさっと塗ってみると、昔の魔法が戻ってきました。
おじさんになった若者は、ものすごいサーフィンをして、廻りの人を驚かせました。
そのワックスは小さかったけど、いくら使っても減りません。
おじさんに子供が生まれ、その子の名前をケリーと付けました。
ケリーは、世界チャンピオンを7回取った腕前ですが、お父さんの教訓からこのワックスを使っていることは、心許せる友人だけが知っています。
All photos by ©Kenboku2006
あり余る時間と情熱にあかせて、さまざまな場所で色々なサーフボードに乗ってきて、気づいたことがある。
それは、「初めてサーフィンをした波質が、自分の好きな波を形成している」ということだ。
私は鎌倉は七里ヶ浜のリーフブレイクでテイクオフを知った。
若布の季節で、ワイプアウトをするたびにそれが顔に覆い怖かった思い出があるから初春の干潮だったのだろう。
そこで波のある日は、一日中波乗りをしていた。
疲れ果てて上がると、江ノ島と小動岬の向こうに沈む透明な夕陽にうっとりとして、近づく江ノ電の汽笛にしびれたのだ。
今でこそベン・ハーパーという高尚な音楽を聴いているが、当時はYMOかサザンオールスターズ一直線で、また準備体操にはストレッチなどなく、ラジオ体操風を適当にして、海に入っていたのだからいい時代だったのだと思う。
俺の波乗りを始めた場所、この波質は、テイクオフをすると3mくらいの壁となる。
本当はもっと長い壁だったのだろうが、初心者なのでショルダー側からテイクオフをしていたのだからこんなものだろう。
そのままそれを突っ走り抜けると、その壁が手前内側に曲がり、その角度に合わせてボードを傾けてカットバックする。
泡が近づくと重心を低くして落ちないようにして、泡に押されたボードと俺はそのまま岸まで何度かチョットバックという偽ターンをしながら乗り、エイヤッとプルアウトするのが極上の満足ライディング、これがオガマさんやカカイさんという超大先輩たちの言うところの「マンライ」であった。
そのマンライが一日に3本出ればしめたもので、当時酒を飲まなかった俺は藤沢吉野屋に原付を飛ばし、景気よく牛丼大盛りを食べたものだ。
そんな名水鎌倉でサーフしていたと思っていたら、茅ヶ崎のビーチブレイクに越し、カリフォルニアに渡り、いつのまにかノースハワイに来ていた。
こちらは世界の名水で、有名な大波がバンバンとやってくる。
大波も毎日あると飽きてくるもので、というよりスリルは疲れることに気づき、南西の小さなリーフ波に行ってみようと思い立った。
ここは夏のブレイクなので、こんな季節には人などいない。
たまにいても観光ガイドを読んでやってきたツーリストで、波を待つ場所がオフセットされているのですぐにわかる。
ここには丸いノーズラウンドノーズ・フィッシュ(RNF)系がよく合うので、AVISO RNFからQちゃん、はたまた12年前の創世記RNFなどを持っていって、ジャキッとターンしたり、大きなカービングでトム・カレンを気取ったり、ノーズライディングを決め、「もうジョエル・チューダーは過去の人だ!」とひとりつぶやき、胸を張る。
だが、それは頭の中に発生した幻視、幻想であることは知りながら、舞台に上がった役者のように入り込んでしまう自分であった。
実際にジョエル本人と会うと、そんなことを忘れ、「世界一のサーファーだ!」感動してしまう軽薄な俺も知っている。
(実際に世界一と思うサーファーはジョエルの他にも多く、その都度変わる変動制の象徴なのを理解してほしい)
そんなある日、コールがメイヘムからRNFデザインを盗用したブレットフィッシュ(以下BLF)が届いた。
ブレットとは弾丸という意味で、弾のように速いフィッシュということからこの名が付いたという。
メイヘム版と、このコールBLFの大きな違いはレイルフォイルと、少し尖ったノーズとテイルキックだろうか。
コールのレイルフォイルが微かに繊細で、ノーズは尖り、テイルキックがほんの少し付いている。
これら両デザインはリリースから10年は経っているので、すでに完成されているのだろう。
みんなが気になる感想は、率直に「とても優れていて、どちらが調子良いか判断できないです」という優等生な意見を述べるが、やはり選択にあたってはブランド名で、またはロゴマークのかっこよさ、評判、友人関係、家庭環境、学歴、職歴、年収や、インスピレーションで選ぶといいだろう。
きっとその違いでしかない。
以前オリンピックをTV観戦していて気づいたのだが、パラレル大回転(giant slalom)競技決勝で、1位から10位までのタイムの差が1秒にも満たないことを知って驚いたことがある。
世界中から選ばれた選手、その技術、体力、体型の差がたったコンマ何秒の中に閉じ込められていたのだ。
先日のパイプラインマスターズ決勝でもそうだ。
ケリーの波よりアンディの方がわずかに上回っていただけだ。
彼らには差などなく、それぞれの波の選択が大きな違いとなったのだろう。
一流となればなるほど、その差は狭まるのだ。
これを用いて説明すると、BLFとRNFの相違点を説明しやすいと思う。
さて、波に戻ろう。
このリーフ波の特色は、小さくても大きくても変わらない緩やかな斜面につきる。
カリフォルニアではサンオノフレやトレッスルズ、日本だと御宿や鎌倉を想像するといいだろうか。
その長く伸びた斜面は無風コンディションと相まって、滑らかにフェイスをギラ反射させている。
冒頭に出てきた初めて乗った種類の波だ。
深い愛を捧げたいほどの波質。
美しい…、と見とれながらしっかりとパドリングをして、BLFを波に漕ぎ入れ、トーンと両足を一気に乗せ、遠くまで伸びたショルダーの向こうまで走り抜けたい気分になるが、あえてゆらゆらとファーストセクションにターンをかけていく。
一回のターンをきっかけとして加速する。
そして、もう一回とさらにターンをすると、追加速し、これで最高速となった。
そのままボトムでボードをスクエアに(思いきり)寝かせ、そのままトップに跳ね上げると、ボードは狙ったところに見事に駈け上がった。
ボードの裏側で重い波先を受けながらテイルを返すと、さらなる加速を感じ、今度はさらにフックの先にまで出て、大きなラウンドハウスカットバック(RHC)をしかける。
RHCの成功の鍵は、トップから向きを変え、最後にはスープに当て込むリエントリー(再入場)までを100%として、それぞれのステージにその100を割り振るとやりやすいだろう。
例えば、最初の向きを変えるトップターンに20%、そしてそれを10%でボトムまで持ってきて、ボトムからトップにあげるのを40%、最後のリエントリーに30%を使うというメカニズム。
または最初に15、それから10、ボトムで25、最後のリエントリーに残りの50%を惜しげもなく使うと、ものすごい返しとなる。
そんな種類、バリエーションを考えながら波を乗り継ぎ、スケーティングして、最後はスピードが残っているところで、「ズバン」と威勢良く江戸前プルアウトだ。
無論これはマンライである。
“俺は今生きている!”
と感じ、湧き上がってくることがあるが、それはだいたいこんなマンライのときだ。
あまりにもうれしいので、パドリングをいつもより強めにして沖に戻る。
沖に戻ったところで、腹の前あたりに何か見えるので「?」と思いよく見ると、空の雲が海面に映りこんでいた。
上を見上げると、海面に映っている雲よりしっかりとした輪郭の雲が3つ、青く広い空に浮いていた。
詩的な表現で恐縮だが、こんなにもゆったりとして、満ち足りた気分にさせてくれたBLF。
BLFにありがとう、波にもありがとう、ハワイの海にも、コールにも、健康にも時代と、太陽へと、感謝の気持ちがとめどなくあふれた。
まとめるとBLFの早いテイクオフ、あっというまの最高速、精確で流れないターン、歯切れ良く、やわらかく艶のある動作、女心がわかり、瞑想させ、精神を浄化し、世界に感謝させてくれるサーフボードはそうざらにはないだろう。
ひと昔前だが、一家に一台カラーTVという時代があったように、
空に雲 みんなで乗ろう BLF(ブレットフィッシュ)
というキャッチコピー句を詠んでみた。
昨日の朝、インターネットでチェックする南うねりのブイが持ちあがっていたので何の気なしに波を見に行くと、なんと5フィートオーバーのパンピング。
この5フィート、カリフォルニア流に表示すると、3フィート・ダブルオーバーヘッド、または15フィート、日本だとダブル半だろうか。
深い沖から一気にうねりは駆け上がり、大きなバレルとなり、海面にものすごい量の白い泡を跳ね上げていた。
しかもここは南側で俺が最も敬い、愛するホワイトハウスだからたまらない。
不意を突かれ、体、精神的に何も準備できていない状態だったが、ここでぐっと丹田に力をいれて、シートベルトを外した。
ウエットスーツを裏返している間にもセットは途切れずにやってくる。
しかも見渡す限り無人。
これから危険なロータイドに突入する潮だが、そんな逃げ口上は許されないほど、舞台は整っていた。
ここは南側なので、ハイウエイから波がチェックでき、後ろにはコンドミニアムやらホテルが建ち、この島では賑やかな場所に属する。
それなのにこのハイウエイには他のサーファーの車が一台だけ。
その二人組は、季節はずれの大波を見て呆然としていた。
12月17日、しかも日曜日。
快晴、風はオフショア、青い海に白い高波。
まるで絵画風景だが、これは現実だ。
持ってきたボードは小波用5’5”バットフィッシュのみだが、かなりの量のワックスと、大波用の太く長いリーシュを発見して安心する。
手早く支度を済ませながら、「丹田に入れた『気』をエネルギーに」という自己暗示にかけ、リーシュの砂を払い、足首にしっかりと巻き付け、祈るようにボードを抱え、岩場からのエントリーをすると、海面が踊るように跳ねている。
強いカレントは一直線に沖に走り、久しく味わっていないそのカレント速度と揺らぎに少し不安になるが、気持ちを盛り上げようと、「ホワイトハウスちゃん、いざっ!!」と叫んだ。
チェックした時は最後のインサイドセクションにクローズアウトがあったが、タイミングよくセットの合間でここも無事通過。
あっという間に沖に着く。
ここは100%リーフブレイクなので、いつも同じ場所でブレイクする。
自分のいる場所を確認する。
これは漁師が使う「山立て」という方法で、岸にある複数の目印を目安に自分のいる場所を知る。
位置を合わせていると、突然沖が動いた。
こんな沖でまさか?
と思い、手前の波を越えるとそのまさかだった。
いきなりオバケセットが出現した。
気がゆるんでいたわけではないが、想定外のことに一瞬たじろぐ。
しかし、体はきちんとそれに反応して、それを避けようと沖へ、ショルダーへ斜めに全力でパドリングを開始していた。
波が切り立つのを刻々と確認しながら祈るように漕いだ。
全く進んでいないように感じるパドリング。
一瞬で近づく水壁、一定のところまで持ち上がって、次の瞬間に一度止まり、ピッチャーのモーションのように弧を描きながら波のトップが分厚いリップとなり俺に向かって落ちてきた。
絶体絶命だが、波との距離が近づき、その裏側に入るべく、全開漕ぎを一回一回強く、そして精確に漕いだ。
最後の瞬間、リップの裏側に回れるという判断を下し、そのまま全力でノーズを沈め、後足でテイルを可能な限り深く沈めた。
インパクトを避けた俺はそのまま波の中に入り、秒を普段より長く感じながら、海面に突き出た。
オフショアから吹き出たものすごい量の飛沫が降ってきた。
「ドシャー!」という音が止むまで目を開けずに、パドルスピードを変えないように、沖に突き進む。
さらに沖に波はやってきているはずだ。
飛沫が落ちきったところで目を開けると、同様な波壁が飛び込んできた。
ほぼ同様にそれにダックダイブをかまし、飛沫の後に目を開けると、小さめの波がセットイベント終了を合図していた。
その波を越え、いつもの平らな水平線を見届けたところで気持ちを切った。
重量感のある水、大量に海面を持ち上げる斜面は「波」ではなく、海の怒りに感じるほど恐ろしい。
太平洋に舞う木の葉のような孤独な気持ち。
圧倒的に強力な波の下では、自己など無きに等しかった。
一度海に入ってしまえば、泣こうがわめこうが、助けを求めても、誰もいなくても、波は平等にその鉄拳をふるう。
ようやく体が震え始めた。
この震えは強い波の日にはいつものことで、海の、自然の無情を知り、寂寥(せきりょう)感が体からパワーを奪っていく。
気持ちを切り替えたい。
でないと、俺は岸にすら戻れないのだ。
落ち着かせようと、野球選手のイチローさんがやる「一点を凝視して集中する」方法をはじめた。
イチローさんは打席でバットを立て、後ろのある一定の景色に合わせていることをナンバー誌で読んだ。
それから真似をしていて、俺の場合はノーズのストリンガーを凝視する。
バットフィッシュのノーズ、命を預けるサーフボードに精神の芯を入れていくと、パワーと意志が戻ってきた。
「よし、行くぞ!」
と波に向き直った。
それから少しづつ挑戦を続け、限界までチャージして、この日はみんなが来るまで十数本もの貴重な斜面をありえないほど高速で滑降した。
その内の二本は波のトップからボトムまで、テイクオフの姿勢のままエアダイブした。
「ボトムに叩きつけられる!」と思ったが、なぜか当たらず、どちらも予想したより巻かれなかった。
落下速度が速く、衝撃波よりも深く潜ってしまったからだろう。
最悪なワイプアウトは、中盤に乗った5フッターで、この日は昨日まで突風となっていた貿易風であるイーストスウェル(東うねり)が残っていて、ここのファーストセクションにウエッジ(横波、こぶ)となって出現していた。
テイクオフをメイクし、ボードを引き上げながら壁に合わせレイルをセットしたが、その巨大な東からの横こぶは、フェイスから横綱曙の突き出しのように一瞬で俺とバットフィッシュを払った。
そのまま波に巻かれたのだが、スラッジハンマー(sledge hammer=壊滅的な大かなづち)と形容されるここの有名なイーストウエッジは圧倒的な破壊力で俺を叩き、そしてリーフに押しつけた。
ある程度我慢したところで底を蹴って海面に上がったのだが、そのイニシャルインパクト(初期衝撃)の後にも海底に吸い込む回転運動が残っていて、かなりの時間海中を漂った。
恐怖を感じ、遂に目を開け、白い暗き泡と、その向こう側に鈍く光る海面を確認し、「絶対上がるぞ」と息を入れ直した。
この時、絶望を感じることもあるし、その心象はさまざまだが、後で思い返すと実に興味深い感覚である。
そして最高の波は、後半に乗った5フッターのインサイドバレルで、手前からダウンラインし、高速のままそのフックに合わせて吸い込まれた。
ジャックアップしたリップは高いところから向こう側に飛んでいく。
横裏に廻った逆光が波の上に透け、スタンディングポーズのままそのエグイセクションを通り抜けた。
これがこの日、自分が得た饗宴だった。
「ドロップちゃん(このブレイクの本名)!イエィ!!」と海面を叩き、アドレナリンと、他の脳から分泌される麻薬成分が足の先まで拡がった。
とまあ、昨日のことを思い出していたら興奮してこんな文字量になってしまった。
ちなみに今日は同サイズ、イーストが入っていない分、イージーで柔らかめなフェイスだった。
昨日の情報はもう伝わっていて、15人という大人数が早朝よりひしめき合っていた。
昨日、なぜ空いていたかを分析すると、一番の要因は誤った波情報だったはずだ。
それぞれの波情報サイトは同様のソースを使い、なおかつ実際に波を見に行っていなく、各サイトは膝から腰のまあまあと朝6時半にアップしていた。
それに加え、クリスマス前週の日曜日、ということは教会やら家族サービスに忙しい日であって、実際に海に見に行けた人が限られたということ。
そしてこの島のサーファー数が少なく、誰も予想しなかった冬にやってきた巨大な南うねりが要因していたのだろう。
俺に届いた一足早いクリスマスプレゼントか。
プレゼントにしては苦しみもあったから、やはりバランス論者の俺としては、これ以上考えずに「ただ幸運だったんだ」としておこう。
(追記)
今フェイマス社のジェイミーから電話がかかってきて、「昨日NAKIがホワイトハウスで乗ったエピック(epic=亨楽)な波を見たよ、あれはすごかった。道路からみんな叫んでいたんだぜ」と言うから、目撃者がいたことに驚いた。
で、あの波をもう一度なぞらえてみると、体がアドレナリンで細かく沸騰した。
これで俺は当分の間、エピックな気分で生きられると確信している。
深く、遠くに伸びた波乗道を再確認した2006年の暮れです。
この5フィート、カリフォルニア流に表示すると、3フィート・ダブルオーバーヘッド、または15フィート、日本だとダブル半だろうか。
深い沖から一気にうねりは駆け上がり、大きなバレルとなり、海面にものすごい量の白い泡を跳ね上げていた。
しかもここは南側で俺が最も敬い、愛するホワイトハウスだからたまらない。
不意を突かれ、体、精神的に何も準備できていない状態だったが、ここでぐっと丹田に力をいれて、シートベルトを外した。
ウエットスーツを裏返している間にもセットは途切れずにやってくる。
しかも見渡す限り無人。
これから危険なロータイドに突入する潮だが、そんな逃げ口上は許されないほど、舞台は整っていた。
ここは南側なので、ハイウエイから波がチェックでき、後ろにはコンドミニアムやらホテルが建ち、この島では賑やかな場所に属する。
それなのにこのハイウエイには他のサーファーの車が一台だけ。
その二人組は、季節はずれの大波を見て呆然としていた。
12月17日、しかも日曜日。
快晴、風はオフショア、青い海に白い高波。
まるで絵画風景だが、これは現実だ。
持ってきたボードは小波用5’5”バットフィッシュのみだが、かなりの量のワックスと、大波用の太く長いリーシュを発見して安心する。
手早く支度を済ませながら、「丹田に入れた『気』をエネルギーに」という自己暗示にかけ、リーシュの砂を払い、足首にしっかりと巻き付け、祈るようにボードを抱え、岩場からのエントリーをすると、海面が踊るように跳ねている。
強いカレントは一直線に沖に走り、久しく味わっていないそのカレント速度と揺らぎに少し不安になるが、気持ちを盛り上げようと、「ホワイトハウスちゃん、いざっ!!」と叫んだ。
チェックした時は最後のインサイドセクションにクローズアウトがあったが、タイミングよくセットの合間でここも無事通過。
あっという間に沖に着く。
ここは100%リーフブレイクなので、いつも同じ場所でブレイクする。
自分のいる場所を確認する。
これは漁師が使う「山立て」という方法で、岸にある複数の目印を目安に自分のいる場所を知る。
位置を合わせていると、突然沖が動いた。
こんな沖でまさか?
と思い、手前の波を越えるとそのまさかだった。
いきなりオバケセットが出現した。
気がゆるんでいたわけではないが、想定外のことに一瞬たじろぐ。
しかし、体はきちんとそれに反応して、それを避けようと沖へ、ショルダーへ斜めに全力でパドリングを開始していた。
波が切り立つのを刻々と確認しながら祈るように漕いだ。
全く進んでいないように感じるパドリング。
一瞬で近づく水壁、一定のところまで持ち上がって、次の瞬間に一度止まり、ピッチャーのモーションのように弧を描きながら波のトップが分厚いリップとなり俺に向かって落ちてきた。
絶体絶命だが、波との距離が近づき、その裏側に入るべく、全開漕ぎを一回一回強く、そして精確に漕いだ。
最後の瞬間、リップの裏側に回れるという判断を下し、そのまま全力でノーズを沈め、後足でテイルを可能な限り深く沈めた。
インパクトを避けた俺はそのまま波の中に入り、秒を普段より長く感じながら、海面に突き出た。
オフショアから吹き出たものすごい量の飛沫が降ってきた。
「ドシャー!」という音が止むまで目を開けずに、パドルスピードを変えないように、沖に突き進む。
さらに沖に波はやってきているはずだ。
飛沫が落ちきったところで目を開けると、同様な波壁が飛び込んできた。
ほぼ同様にそれにダックダイブをかまし、飛沫の後に目を開けると、小さめの波がセットイベント終了を合図していた。
その波を越え、いつもの平らな水平線を見届けたところで気持ちを切った。
重量感のある水、大量に海面を持ち上げる斜面は「波」ではなく、海の怒りに感じるほど恐ろしい。
太平洋に舞う木の葉のような孤独な気持ち。
圧倒的に強力な波の下では、自己など無きに等しかった。
一度海に入ってしまえば、泣こうがわめこうが、助けを求めても、誰もいなくても、波は平等にその鉄拳をふるう。
ようやく体が震え始めた。
この震えは強い波の日にはいつものことで、海の、自然の無情を知り、寂寥(せきりょう)感が体からパワーを奪っていく。
気持ちを切り替えたい。
でないと、俺は岸にすら戻れないのだ。
落ち着かせようと、野球選手のイチローさんがやる「一点を凝視して集中する」方法をはじめた。
イチローさんは打席でバットを立て、後ろのある一定の景色に合わせていることをナンバー誌で読んだ。
それから真似をしていて、俺の場合はノーズのストリンガーを凝視する。
バットフィッシュのノーズ、命を預けるサーフボードに精神の芯を入れていくと、パワーと意志が戻ってきた。
「よし、行くぞ!」
と波に向き直った。
それから少しづつ挑戦を続け、限界までチャージして、この日はみんなが来るまで十数本もの貴重な斜面をありえないほど高速で滑降した。
その内の二本は波のトップからボトムまで、テイクオフの姿勢のままエアダイブした。
「ボトムに叩きつけられる!」と思ったが、なぜか当たらず、どちらも予想したより巻かれなかった。
落下速度が速く、衝撃波よりも深く潜ってしまったからだろう。
最悪なワイプアウトは、中盤に乗った5フッターで、この日は昨日まで突風となっていた貿易風であるイーストスウェル(東うねり)が残っていて、ここのファーストセクションにウエッジ(横波、こぶ)となって出現していた。
テイクオフをメイクし、ボードを引き上げながら壁に合わせレイルをセットしたが、その巨大な東からの横こぶは、フェイスから横綱曙の突き出しのように一瞬で俺とバットフィッシュを払った。
そのまま波に巻かれたのだが、スラッジハンマー(sledge hammer=壊滅的な大かなづち)と形容されるここの有名なイーストウエッジは圧倒的な破壊力で俺を叩き、そしてリーフに押しつけた。
ある程度我慢したところで底を蹴って海面に上がったのだが、そのイニシャルインパクト(初期衝撃)の後にも海底に吸い込む回転運動が残っていて、かなりの時間海中を漂った。
恐怖を感じ、遂に目を開け、白い暗き泡と、その向こう側に鈍く光る海面を確認し、「絶対上がるぞ」と息を入れ直した。
この時、絶望を感じることもあるし、その心象はさまざまだが、後で思い返すと実に興味深い感覚である。
そして最高の波は、後半に乗った5フッターのインサイドバレルで、手前からダウンラインし、高速のままそのフックに合わせて吸い込まれた。
ジャックアップしたリップは高いところから向こう側に飛んでいく。
横裏に廻った逆光が波の上に透け、スタンディングポーズのままそのエグイセクションを通り抜けた。
これがこの日、自分が得た饗宴だった。
「ドロップちゃん(このブレイクの本名)!イエィ!!」と海面を叩き、アドレナリンと、他の脳から分泌される麻薬成分が足の先まで拡がった。
とまあ、昨日のことを思い出していたら興奮してこんな文字量になってしまった。
ちなみに今日は同サイズ、イーストが入っていない分、イージーで柔らかめなフェイスだった。
昨日の情報はもう伝わっていて、15人という大人数が早朝よりひしめき合っていた。
昨日、なぜ空いていたかを分析すると、一番の要因は誤った波情報だったはずだ。
それぞれの波情報サイトは同様のソースを使い、なおかつ実際に波を見に行っていなく、各サイトは膝から腰のまあまあと朝6時半にアップしていた。
それに加え、クリスマス前週の日曜日、ということは教会やら家族サービスに忙しい日であって、実際に海に見に行けた人が限られたということ。
そしてこの島のサーファー数が少なく、誰も予想しなかった冬にやってきた巨大な南うねりが要因していたのだろう。
俺に届いた一足早いクリスマスプレゼントか。
プレゼントにしては苦しみもあったから、やはりバランス論者の俺としては、これ以上考えずに「ただ幸運だったんだ」としておこう。
(追記)
今フェイマス社のジェイミーから電話がかかってきて、「昨日NAKIがホワイトハウスで乗ったエピック(epic=亨楽)な波を見たよ、あれはすごかった。道路からみんな叫んでいたんだぜ」と言うから、目撃者がいたことに驚いた。
で、あの波をもう一度なぞらえてみると、体がアドレナリンで細かく沸騰した。
これで俺は当分の間、エピックな気分で生きられると確信している。
深く、遠くに伸びた波乗道を再確認した2006年の暮れです。
初めて見た七里ヶ浜は若布(わかめ)の季節だった。
春の、大潮干潮の海が大小の若布を突きだしている。
陽が照りつける広い浜、その右手に小動、奥には江ノ島、遠くには富士山が見える。
「閉鎖的な」と表現される鎌倉ビーチカルチャーだが、ひとたび中に入れば家族的な団欒があり、先輩である不良兄さんたちの青春を引き継ぐ良さがあった。
いつも友人たちに会えるブレイク。
先日ひさしぶりにそこで波乗りをすると、変わらないみんながいて、「これだぁ、ゆったり波乗りは鎌倉に限るぞ」と思ったものだ。
様々な世界のビーチタウンに行ったが、ここまで家族的なカルチャーは見つからない。
四季があり、リーフがあって、海が生きている。
反射する光の中で記憶が溶けていく。
俺の初めてのテイクオフ、繰り返し練習したカットバック、朝陽の斜面、台風のうねりの重さ、夕陽の墨絵のような江ノ島と富士山。
波乗りを終え、バス停の階段を登ると、ちょうどやってきた江ノ電の汽笛が溶け、揺らいで立ち昇っては消えていった。
愛する鎌倉。
(初出誌オンザボード)
春の、大潮干潮の海が大小の若布を突きだしている。
陽が照りつける広い浜、その右手に小動、奥には江ノ島、遠くには富士山が見える。
「閉鎖的な」と表現される鎌倉ビーチカルチャーだが、ひとたび中に入れば家族的な団欒があり、先輩である不良兄さんたちの青春を引き継ぐ良さがあった。
いつも友人たちに会えるブレイク。
先日ひさしぶりにそこで波乗りをすると、変わらないみんながいて、「これだぁ、ゆったり波乗りは鎌倉に限るぞ」と思ったものだ。
様々な世界のビーチタウンに行ったが、ここまで家族的なカルチャーは見つからない。
四季があり、リーフがあって、海が生きている。
反射する光の中で記憶が溶けていく。
俺の初めてのテイクオフ、繰り返し練習したカットバック、朝陽の斜面、台風のうねりの重さ、夕陽の墨絵のような江ノ島と富士山。
波乗りを終え、バス停の階段を登ると、ちょうどやってきた江ノ電の汽笛が溶け、揺らいで立ち昇っては消えていった。
愛する鎌倉。
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プロフィール
名前:Naki 2009 または船木三秀
HP:NAKISURF
性別:男性
職業:専門職
趣味:海
自己紹介:
11年暮らしたカリフォルニアからノースハワイ島に住みかえ、毎日クオリティの高い波で波乗りをしています。
私は波乗り殉教者で、肩書きはプロサーファー、写真家、画家、ルポライター、デザイナーです。
風が創ったさざ波が合わさり、遠くの洋(うみ)から陽の下、夜の中を駈けてきたうねりに乗る、というような気持ちで波に接している。
その欲求と探求心は飽くことがないようで、小さい頃からの夢であった世界の海を旅し、自分なりのアウトプットを続けています。
波を知ることは海を知ること。その深遠無限のインスピレーションを感じ、ゆらゆらと絡まった日々をこのブログで綴れたらなあ、と。
そんな波乗りの奥深さ、その意識や感覚を文章、写真、絵で表現できたらと思っています。
同業の方、同じ夢の方、海が好きな方、波乗りを愛する方、この場でお話しましょう。
ありきたりの道具論に留まらないメッセージをみなさまと創ってみたいのです。
また、カリフォルニア州、サンクレメンテ発のサーフショップ『NAKISURF.COM』も運営しております。
こちらは長年培ったサーフ業界のコネクションを活かし、世界で一番誇れるWEB STOREを目指しておりますので、どうぞご覧になってください!
ぜひ!
どうぞよろしくお願いします。
私は波乗り殉教者で、肩書きはプロサーファー、写真家、画家、ルポライター、デザイナーです。
風が創ったさざ波が合わさり、遠くの洋(うみ)から陽の下、夜の中を駈けてきたうねりに乗る、というような気持ちで波に接している。
その欲求と探求心は飽くことがないようで、小さい頃からの夢であった世界の海を旅し、自分なりのアウトプットを続けています。
波を知ることは海を知ること。その深遠無限のインスピレーションを感じ、ゆらゆらと絡まった日々をこのブログで綴れたらなあ、と。
そんな波乗りの奥深さ、その意識や感覚を文章、写真、絵で表現できたらと思っています。
同業の方、同じ夢の方、海が好きな方、波乗りを愛する方、この場でお話しましょう。
ありきたりの道具論に留まらないメッセージをみなさまと創ってみたいのです。
また、カリフォルニア州、サンクレメンテ発のサーフショップ『NAKISURF.COM』も運営しております。
こちらは長年培ったサーフ業界のコネクションを活かし、世界で一番誇れるWEB STOREを目指しておりますので、どうぞご覧になってください!
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