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イナリーズと名付けたのは俺です。

冬は毎朝ここに通う。
毎朝5時半に開く『メネフネマート』という商店の開店を待って、一個70セントのいなり寿司を3個購入。
それを頬張りながら波チェック、そして波乗り後は残しておいた二個を食べることで「イナリ」という単語が焼き付いたようだ。
余談だが、「ここのいなり寿司の温度が暖かければ暖かいほど波が良い」という相対性理論がガッカイで発表されている。
「なんだいなり寿司!?」とあなどるなかれ、イナリはアカデミックなのだ。
だから俺はいなり寿司の入った紙袋を手にすると、まずその温度を確かめる。

イナリーズは全長およそ3kmのビーチブレイク。

ここを好きなアンディ・アイアンズがノースからやって来ると、一緒に10人くらいの取り巻きが来るので、少しにぎやかになるけど普段は無人。
もし100人が来ても、そこらじゅうにーー無数にあるピークーーー散らばれるから気にならないと思う。

そのアンディと沖で会った時、
「ここはバックドアとキラのミックスで、世界一のビーチブレイクさ。誰にも言っちゃダメだよ、ここはトップシークレットなんだ」
と、俺に教えてくれたのは昨年のパイプラインマスターズの翌日。

彼はパイプで優勝し、そのままビラボン飛行機でここに来たそうだ。
パイプがパンピングしている間、ずっとここが気になっていたんだと言った。

その後、アンディは北西うねりの大きな日にやってきて、夢より長いバレルをメイクした。
俺がいた場所の遙か右側からテイクオフした彼はボトムに降りると、トップからボトムまで真ん丸になったバレルに吸い込まれた。

中をパンプし、ものすごいスピードで目の前を走り抜け、左側、朝陽の逆光に消えながら大量のエアと一緒に吹き出されてきた。
その距離軽く500m。
目を疑ったが、それは紛れもない真実だ。

ここの特徴は、誰もいないこと。

着替えはいつもすっ裸。
四駆で砂浜を走り、好きなピークの前に停めて目印にする。
鍵も車に付けっぱなし、ドアも開けっ放し、雨はめったに降らないので着替えも砂浜に置きっぱなし。
全てオープンなのでR。

イナリーズ、今日もすごい波でした!

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海に戻ると、色々なことが変わった。
昨日の夕方に新しく届いたニコンD200用の水中ハウジングをテストしようと、普段行かない場所に。
テストを終え、夕陽を撮ろうと、岩場に出ると沖にこの凄まじいパーフェクト波を見つけた。



ご覧の通り、どこまでも無人。
レフト、ライト同時にエアスピットを吹き出した波は生まれて初めて見た。
ククイの木があるので「ククイグローブ」と命名。
このノースハワイは云われている通り、すごいスケールの波が各地にある。
本当にすごいところだ。
波乗り人にとっては聖なる場所なのだろうな。

さて、昨日もお伝えしたようにサウスからダブルオーバー、北西から10フィートが届いていて、快晴、無風。
ありえない夢のようなコンディションが続いている。

昨日海に戻った俺は4時に起き、冬のブレイク、イナリーズに突撃。
今年初のイナリーズ。
ここは俺が選んだ世界トップ3に入る大好きな波。

薄明かりの中、「ドッフーン!!」と轟音を発し、6フィートのバレルが大爆発していた。
武者震いなのか、怖いのかわからなけいど、足が震える。

まずは新しいデジタルハウジングを持って、沖に泳ぎ出る。
パワーがすごい、流れがすごい。
けれど、南と北西ミックスのおかげで、カレントは右に行ったり左に戻ったりと全く流されない。
普段(真冬)はたった30分で1000mは流されるからありがたいことだ。

大きなバレルに包み込まれ、シャッターを切る。
興奮を通り越し、完全陶酔してしまった。

.......。

ここで一句。
(イナリーズは冬の季語です)

夢に見た バレルを越える イナリーズ



↑↓はそのデジタルで撮った作品。
今までは水中はフィルムのみだったが、デジタルなので現像しなくてもこうして即見られる。
画期的だなあ。

2GB/CF(コンパクトフラッシュ)撮り終えた俺は、カメラをボードに持ち替え、再突撃。
選びに選んで真ん丸バレルの中をテイクオフし、レイルを斜面にセット。
閉じない出口まで突き進み、その上をキックアウトし、叫声を発しながらプルアウトしたのが一本目。

この喜びは「桃源の」という言葉通りで、頭の中が桃色に沸騰した。
いや、これは桃色に輝いた朝陽の名残かもしれぬ。

宇宙から飛んできたようなリップ、
一瞬で1mはぶれるフェイス、
巻き上げるのではなく、波から吹き出す砂。
高速道路でダンプトラックに轢かれたようなワイプアウト。

3ナンバーの車も走り抜けられるほどのバレルの大きさ。



どの波も記憶にあったイナリーズを越えている。

「大気圏突入」と名付けたいほどのテイクオフ、バレル内での超空間に衝撃を受けた。

サーフィングとは、ここまでスリリングで、真空感覚とは知らなかった...。

いや、これはいつもの夢なのかもしれない。

夢でないのであれば、新しいドアを開けた2006年10月。

手よすぐに治れ。
俺はもっと攻めたいのだ。





秋晴れ、無風。
うねりは南から頭+、そして北西からダブルオーバーが届いている、
島全体にうねりはあり、こんなコンディションは珍しいので、手のリハビリ中だが「波を近くで見るだけ、チャンネルまで」と決め、痛い手でパドリングし、ホワイトハウスへ。



美しく丸いバレルの波は、もうドパーフェクト。
「海は最高!ホワイトハウス最高!!」
とにやけていたのだが、やがてだんだん波に乗りたくなってきた。

今度は「スタンドアップせずに寝て滑り降りるだけ」とテイクオフしたら、なんと条件反射で立っていた。
おおー、いきなり波乗り復活したぞ。



そのまま何本か乗り、なんとかリーフを越えて岸に上がるとじわっと感動してしまった。
たった2週間離れていただけだが、波あっての俺だということに気が付いた。

波乗りに復活できたら飲もうと決めていた地ビールを出し、栓をガコッと開け、ゴクグビグビーーッと一気に飲んでしまった。
うまい、最高、波乗りバンザイ!



手はまだ痛いのでこのままアイシングとギブス、そしてリハビリを続けます。
高橋先生、お世話になりました。
おかげさまでここまで来ました。
全快までもうすぐです!


秋晴れは夜空がきれい。

東京で最後に天の川が見えたのは1971年(昭和46年)だそうです。
ここノースハワイでは天気がいいと数億もの星が見えます。
遠い星、近くの星、白、赤、青、黄、オレンジ、緑、紫。
望遠鏡を使って見ると、星には色があることを知りました。
そして今見えている星は遠い過去の光なのです。

地球は銀河系の中にあることはご存じですね。
ここから一番近い外銀河は「アンドロメダ大銀河」です。
ちょうどこの季節に天頂に見える銀河渦。



直径が22万光年。
端の星が端の星まで光を届けるのに22万年、つまり、80.300.000日かかる距離です。

「もし、宇宙急便があったら、いったいどのくらいかかるのかな?」

と物知りのトムくんに聞いてみたい。
彼はスペースシャトルのスピードを距離で割るのでしょうか。

ちなみにこの太陽系(solar system)で、太陽から一番遠い冥王星までの距離は平均60億kmで、これをスペースシャトルのスピードで行こうとすると、6.000.000.000(冥王星までの距離)÷248.832.000(スペースシャトルの秒速約8kmより 年/km)=24.1126...≒約24年程かかります。

話が逸れました。
今夜星空を見上げたときに「アンドロメダ大銀河の光」があったのなら、それはここから230万光年離れているので、私たちは230万年前の星雲の過去の光を見ているのです。
230万年前、遙か遠い昔ですね。

人間は、海から発生した細胞から進化したと言われています。
今でも海に潜ると、目に見えない天文学的な数の細胞や原子が散らばっているのでしょう。

∞(無限)という文字がつながっているように海と宇宙はメビウスの輪のようにつながっているのかも、と考えてしまったのがこの写真。
秋の夜長は深いな、と。
"Size is no matter" -Yoda.

これは屋久島、永田浜の宇宙。↓



いやあ昨日はブログを書いた後、地震に見舞われた。

実は何人かの友人にメイルをしていたのだけど、その地震の予兆みたいなのが2〜3日前からあって、そんなフィーリング、さらにはイメージをしていたので、揺れた瞬間にノアを抱いて外に飛び出した。

その後すぐに「どこが震源地か?」とか、「津波はないのか?」とTVを廻し、ニュースを見るのだが、さっぱり普通通りの放映。

???
日本ならすぐにテロップが出るのに〜、と、
しょうがないので事情通の友人に電話をすると不通。

車で彼の家に訪ねていくと、勇んで調べた彼は鼻をふくらませながら「ハワイ島が震源で、津波の心配はない」と言うので、安心してそのまま波を見に行きながらハイキングし、地震から7時間後にMLBナショナルリーグ・チャンピオンシリーズ第4戦のTV観戦。

ここまで打率10割2HRの田口には悪いけど、個性豊かなメッツの応援です。
わがメッツは1勝2敗(4勝でワールドシリーズへ)で、今日負けるわけにはいかない、と気合いを入れている。

カーディナルスは常勝なのと、石橋を叩ききる野球のトニー・ラ・ルーサ監督がつまらない。
田口を控えに追いやっているのも彼のせい。
名手ジム(・エドモンズ)はわかるけど、元々の内野手スコット(・スピージオ)がレフト?
彼を3塁に廻し、不調ローレンを控えにし、田口をレフトで先発はないのか!
野球はもっと自由だぞ。
と声を出さずにTVに指摘するのだが、野球ネタですいません。
わからない人にはチンプンカンプンでしょうね。

俺の応援のおかげも0.000%あってメッツが大勝。
やはり応援は大事です。

この放映の間にようやくチャンネル2の女キャスターは、地震についての説明をはじめたけど本当に遅いぞ。
地震から7時間後だぜ。

そこでオアフが「停電で大混乱」とあったので、オアフのみんなに電話するけど不通。

信号が全て止まって、ガソリンも買えず、食事も出来ず、空港は着陸のみで、ホテルのエレベータも止まり、トイレは壊れ、ATMももちろんだめで、ワイキキの夜は真っ暗だったそう。
なるほど大混乱だ。

カリフォルニアにいた時はもっと復旧が速かった気がする。
こちらもアイランドスタイルなんですかね。

今朝みんなに連絡を取り、安否を確認しました。
ということで、みんな無事です。

波が水曜日からまた上がるそう。

手を早く治さなくては。


昨日書いたように退歩的な日々。
せめて早起きしようと、気合いを入れて起きたらまだ夜中の1時だった。
そのままメイル返したり原稿執筆中。

体を退歩させてはいけないと思い、昨日は山登りしようと決意したのだが、麓に到着した途端に大雨に降られた。
雨具でもあったら良かったのだが、あいにくTシャツとトランクスだけで、風邪を引いてはいけないと断念。
さらに体は鈍ってきている。

波乗りしたいなあ、とメイルを開いていたら友人の土井さんが先週に行った種子島紀行が届いていて、読み返していると、マットと行った種子島が蘇ってきた。

これは海老前でのマットとフォード。↓
(パドルしているのがフォーちゃんね)



この時はふたりとも全てコールのボードだった。
コールとも電話で話したが、全快までもう少しだそうで、ようやく光が見えてきた。
治ったらボードを作ってもらおう。

ティミーにも頼もうと思っている。
レトロツインとか乗りたいな。

そう言えば伊豆に一泊旅行に行った時、リアルサーフの直人さんがレトロツインにうまく乗っていた。
あれはかっこよかった。

そんなことを思い出しながら読書に戻り、昨日の「昭和出版残侠伝」を3度目の読み返し終了。
さらなる本を開いていたら、

「自分一人で石を持ち上げる気がなかったら、二人でも持ち上がらない」

というゲーテの言葉を発見した。

「人生気合いかもな」とゆるんだ心を入れ直し、事務所で写真整理したら鎌倉での竜ちゃんの写真が見つかった。
木の質感と、竜ちゃんの雰囲気がしっとりと滲んでいる↓



今回日本で行き忘れたのが西武ロフトで、渋谷ごと行かなかった。
鎌倉と南西諸島の往復で、少し東京って感じで、一度奄美クルーと竜ちゃん号で渋谷を抜けた時は、雨に煙る傘だらけのハチ公前交差点を見て、みんな乾いた車内にいる自分にうっとりとしていた。(笑)




渋谷ではブックファーストと、ホットヨガがお気に入りで、文化村前のLAVAに行っている。
鈍った体にはかなり効くのでオススメです。




指のリハビリとMLBのチャンピオンシリーズTV観戦以外は何もできないので、読書をしている。

日本帰りなので、本屋を漁ったり、きんちゃんにいただいたり、たくさんの本があったので片っ端から読んでいる。

気に入ったのがこれ。
しかも今の気持ちにぴったりの「退歩しろ」と言う師匠、嵐山さん。
さすがだなあ、とあっという間に読んでしまった。



「退歩的文化人」のススメ
嵐山光三郎さん

(本文より)
退歩的条件
いまの日本人の気分は一億総退歩にある。まず、

1.無理をしないこと
 が退歩の条件。のんべんだらりと一日を過ごし、冗談いって生きるのが老人の特権である。価値観は多様化して、なにが進歩なのかわからない。ということでやたらと人気なのが、

2.スローフード
 である。これはファーストフードに対抗する料理で、ゆっくりとスローに作る。ここにある「スローな気分」は「昔へ戻ろう」というせつない希求心で、進歩的文化への反省である。もはや進歩は価値ではなくなった。

3.ローカル線の旅

4.ぼろっちい山の湯
 いずれも退歩的でスローな趣味で、私がそのひとりである。貧相なる山の宿に泊まり、古障子の破れ穴より、原生林から差し込む光を見る。これぞ退歩する悦楽といってよかろう。

5.老人力
 は、ボケ、老化、衰弱を妖術として使い、進歩を無用のものとしたものの、ボケが進行する。はては介護老人となり、思考が消えて、単なる粗大ゴミ化する。老人力は現象の肯定であって、文化ではない。

6.護憲運動
 これは保守反動である。と書くと「なんだそりゃ」といぶかる人がいるかもしれない。保守反動は進歩的知識人の対極にある悪玉であった。しかし、保守とは「現状(憲法)を守る」という立場である。反動とはゆりかえし作用であって、ボールを地面に投げれば、その反動ではねあがる力をいう。転じて、時の流れにさからうことを意味する
 してみると、戦争流行の時代にあっては、反戦運動という反動作用がおこり、「憲法を守り、時代に抵抗する」行為は保守反動となる、進歩の中味が変質したために、こういったねじれた現象となる。

7.古本人気
 は退歩文化の極にある。新刊で読みたい本が少ないから、古書店を廻り、古本をあさる。こう考えてみると、私は退歩に退歩をくりかえしてきた保守反動の確信犯である。
 ワープロ全盛の時代では、

8.手書きの原稿
 は時代遅れである。それを知りつつ、「ワープロで原稿を書く者には負けない」と確信する。一字一句を全霊かけて手書きしてこそ、言霊が読者に伝わる。葉書一枚にしてもしかりである。ワープロで書いた文章には魂がない。気持も入らない。Eメールの文章なんてカスだ、と思う。つまり、進歩について行けない。

9.古着ブーム

10.納豆飯主義者
 美食の時代にあって、「納豆とごはんが一番」と言う人は、貧乏だからそうしているわけではない。ありとあらゆる料理を食べつくしたはてに、この結論にたどりついた。未来学者を名乗る珍妙なる一味がいたが、進歩的文化人と同じく千代紙細工のようなつくりものだからバケの皮がはがれて絶滅した。

11.再婚する男
 せっかく離婚して自由の身となったのに、また結婚の愚をくりかえすのは、退歩症候のあらわれだ。「畳変えて古い女房はそのまんま」でいきなさい。

12.町並み復活
 列島改造で失われた日本の古き町並みをとりかえそうという心意気がよい。一度こわしてしまった町を再現するのは、新ビルをつくる数倍の労力と金がかかる。日本オンボロ列島でいいではないか。よみがえれトタン屋根の町よ。

13.おばさんタレント
 料理、収納、旅行、占い、フリーマーケット、掃除、ガーデニングの技で商売をする。技がなくとも、「おばさん」的発想で、ぐうたら者を退歩安心させる存在は、進歩的なるものの幻想をうちくだく。

14.遍路の旅
 白い死装束と、卒塔婆がわりの杖をついて四国巡礼の旅に出る人は、歩いて「死ぬ愉しみ」を享受する退歩的文化人である。一歩一歩足を運ぶことによって、自分の肉体とむきあう。スポーツカーに乗って走り廻るアンちゃんネエちゃんたちは、一九六〇年代高度成長期の遺物である。ぶっとばせばいいってもんじゃないのだ。

15.古民家暮らし
 一家そろって田舎へひっこんで、農業をやって自給自足の生活。いろりの横で芋汁鍋をすすっている。これはやってみると退屈して、また町へ戻ってくる。あるいは意地で田舎暮らしをつづける人もいるが、時代からずり落ちる覚悟は見るべきものがある。古来より、日本人があこがれた隠者的生活であろう。
 テレビ番組で退歩的なものをさがすと、

16.プロジェクトX
 である。この番組に出演するのが男の晴れ舞台であったが、いずれも時代遅れの連中だ。「そのとき、山田は考えた。もう、あとへはひけない、と」というナレーションが入り、アナウンサーに「大変な御決断でしたね」とふられて涙ぐんでうなずく。古くたっていいじゃないか。思い出だけが人生だ。

17.なんでも鑑定団
 ブリキのおもちゃが三十万円もするのか。と驚きつつ、捨ててしまった玩具に思いをはせる。とっときゃよかったなあ、と溜め息をつくけど、道具屋がそうやって値をつり上げているだけだ。これは退歩商売の手口である。一千万円はすると信じていた古皿が、じつは三千円なんてのがよい。偽者をつかまされた人ほど人間味がある。

18.着物趣味
 大学生で、古い着物を着て「着物愛好サークル」を作っている人がいる。また、着物の似合う女性は色っぽい。日本の首相や閣僚は、全員着物姿で外国へ行け。チンケな背広を着ているからなめられるのだ。

19.オリンピックの金メダル
 「いまさらオリンピックでもなかろうに」なんて言いつつも、みんなオリンピックに熱狂する。メダルなら金に限る。銀は「苦吟」しているみたいだし、銅は「どうだってよい」

20.老舗のカレーライス
 いつまでも「母親が作ってくれたカレー」なんてなつかしむな。老舗のプロのカレーを食べてこそ、舌が退歩する。私は東京日比谷公園にある松本楼のカレーに愛着を感じる。味覚は昔へ昔へとさかのぼっていき、そこで思い出に会う。

21.「奥の細道」ツアー
 列車に乗ると、進行方向と逆の席にすわるときがある。すると、うしろへ、うしろへと進んでいき、車窓風景が前方へぶっとんでいく。あの後退する感覚が、なんともいえぬ恍惚感となる。進歩的なるものがすたれたのは、思想優先の啓蒙主義にあった。「進歩しなけりゃいけない」という呪縛からはなれると、肩の力が抜け、自然体となる。

22.カルチャーセンターの授業
 かつて第一線で活躍していた学者や小説家が、カルチャーセンターの講師となり、安い給料で講義しているのがいとおしい。あれは生活のためにやっているのではない。教える相手が欲しいのだ。かつて幸田露伴は、長屋の御隠居となって客を集めて講釈をしていた。そういえば、

23.大学の客員教授
 は、還暦後の退歩的生活として理想の姿である。授業を聴いてくれる学生がいれば、自分の現在を知る作業ができる。教授会に出なくていいし、純粋に講釈だけをすればいいんだからね。私は東京農大の客員教授である。

24.俳人

25.高齢の落語家

26.会社相談役
  いずれも余裕しゃくしゃくで自在である。

27.新聞社の編集委員
 これまた、うらやましい仕事で、つぎに生まれたら、編集委員ていうの、やってみたい。そこにいるだけでいいんだものね。ようするに、

28.なんにもしない生活
 これが退歩的文化人の理想の姿なのである。進歩という幻想から身をひき、さりとて枯れたわけではなく、意欲的に後退していき、ぼけずに、だらだらと生きていく。悟ってはいけない。迷いつづけて不良なる精神を持ちつづける。「なんにもしない」のに、悠々としている。

29.友情

30.飲酒

31.隠居

32.散歩

33.朝寝
 これらはすべて退歩の条件であって、退歩しつつも、そこに至福の価値を見つけるのがコツであります。



教え30に「飲酒」とあるのを目ざとく見つけたので、前にラベル買いしたワインを空けながらもう一冊と、嵐山さんの新刊「昭和出版残侠伝」をスローに開く。



前半1/3を読んだところで、
これは人生で一番の書かもしれない!と実感し、眠いのもかまわず読み進んだ。



読み終わった後、頭の中がこんなになってしまった。↓



翌日はなぜか早起きし、あれだけ飲んだのになぜか宿酔いにもならず、今2度目を読んでいる。
すでに半分まで行ったが、無くなっていくページが惜しい。
もっと読みたい。
「昭和出版残侠伝2」というのはないのか?

それにしてもこれはNAKISURFで扱いたいほどの一冊で、昭和後半を生きた本好きな人にぜひオススメします。
バカボンこと嵐山さんの浮浪者体験、ドリブ編集長としての超多忙な日々からの脱出。

そして糸井重里さん、笑っていいともの橫澤プロデューサー、ブルータスの編集長、ポパイの編集長、クマさん、学研の部長、南伸坊、安西水丸が実名で登場します。

昭和出版残侠伝

はこちらで↑
送料無料だそうです。
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プロフィール
名前:Naki 2009 または船木三秀
HP:NAKISURF
性別:男性
職業:専門職
趣味:海
自己紹介:
 11年暮らしたカリフォルニアからノースハワイ島に住みかえ、毎日クオリティの高い波で波乗りをしています。

 私は波乗り殉教者で、肩書きはプロサーファー、写真家、画家、ルポライター、デザイナーです。

 風が創ったさざ波が合わさり、遠くの洋(うみ)から陽の下、夜の中を駈けてきたうねりに乗る、というような気持ちで波に接している。
 その欲求と探求心は飽くことがないようで、小さい頃からの夢であった世界の海を旅し、自分なりのアウトプットを続けています。

 波を知ることは海を知ること。その深遠無限のインスピレーションを感じ、ゆらゆらと絡まった日々をこのブログで綴れたらなあ、と。

 そんな波乗りの奥深さ、その意識や感覚を文章、写真、絵で表現できたらと思っています。

 同業の方、同じ夢の方、海が好きな方、波乗りを愛する方、この場でお話しましょう。

 ありきたりの道具論に留まらないメッセージをみなさまと創ってみたいのです。

 また、カリフォルニア州、サンクレメンテ発のサーフショップ『NAKISURF.COM』も運営しております。

 こちらは長年培ったサーフ業界のコネクションを活かし、世界で一番誇れるWEB STOREを目指しておりますので、どうぞご覧になってください!

ぜひ!

 どうぞよろしくお願いします。
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